【管理栄養士の健康コラム】Vol.97 味覚は生きのびる力 |
味覚は生きのびる力
普段私たちはいろいろな食べ物を口にし、その味を味わっています。
味覚は生まれながらに備わった感覚です。
なぜ、人には味覚があるのか?
その理由について、今回はお話ししたいと思います。
味覚には、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの基本の味があります。
これらの味覚には、人類の進化の歴史から考えると生命維持のために欠かせない理由があります。
ヒトは、生きるために色々な栄養素を必要としますよね。
1つはエネルギー源。砂糖・米などの炭水化物を必要としますが、5基本味では、甘味です。
2つめは、ナトリウムなどのミネラル。塩味にあたります。
3つめは、たんぱく質。これはうま味です。
これらの栄養素を識別し摂取するため、味覚が発達してきたというわけです。
逆に、体に悪いものは避けなければいけません。
ですので、腐敗のシグナルである酸味、毒物の警告である苦味も、必要不可欠な味覚となりました。
ただ、酸味に関しては、代謝促進効果があるため、疲れた時に欲することがあります。
このように、人類は、生きのびるために役立つ味覚を進化させてきました。
なぜヒトに味覚が備わったのかを知っておくと、色々納得がいくことがあります。
甘味、塩味、うま味は、子供の時から好きで、酸味や苦味は大人になってからの方が好きになったという経験がありませんか。
子供の時からブラックコーヒーが好きだったという話は、あまり聞きませんよね。
酸味や苦味は本来避けるべき味なので、経験から好きになることが多いのです。
好き嫌いというのは、本能的に備わっているものと、経験によるものがあります。
ですので、赤ちゃんが一番本能的に備わった味覚に頼って生きているということになります。
赤ちゃんは、酸味や苦味のある食材は嫌がるはずです。
また、初めての食べ物も赤ちゃんは嫌がります。
それらは、本能的な警戒行動なんですね。
赤ちゃんの離乳期は、体の良い(おいしい)ものと体に悪い(まずい)ものを学習していく第1歩ですので、無理強いをせず、少量ずつ食べさせてあげると良いですね。
ママやパパなど赤ちゃんが信頼する人から食べさせてもらえると、警戒心もやわらぐでしょう。
現代社会は、味覚に頼らなくても、賞味期限などの情報で判断が可能となりました。
便利にはなりましたが、味覚が衰えていくのでは?と危惧してしまうのは私だけでしょうか・・・。
味覚というのは、他の感覚(見る・さわる・匂いをかぐ・聞く)に比べると、加齢による衰えが緩やかだそうです。
ですので、味覚は大切にしたいものですね。
参考文献:
「日本栄養士会雑誌2016年2月号」
「おいしく味わう体のしくみ 子供に豊かな味覚を」 山本隆著 芽ばえ社
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