【管理栄養士の健康コラム】Vol.88 高血圧はなぜ怖いの? |
前回のコラム「Vol.87 疾病シリーズ「高血圧」 」に引き続き、今回は「高血圧はなぜ怖いのか」についてのお話です。
高血圧になっても、ほとんど自覚症状はありません。
痛みもかゆみもなく、外見の変化もありません。
「なのに、どうして高血圧を放置すると良くないの?」と疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回はその疑問を解決したいと思います。
高血圧は、「サイレント・キラー」と言われています。
その名の通り、自覚症状がほとんどなく、静かに血管を蝕んでいきます。
高血圧を放置すると、まず動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化とは、血管が硬くもろくなったり、内部が狭くなったりする状態で、加齢とともに誰にでも起こる状態ですが、高血圧によって拍車がかかってしまいます。
動脈硬化で血管がぼろぼろになっている状態を放置すると、次に合併症の危険をもたらします。
脳の血管に動脈硬化がおこると、脳卒中(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞など)、心臓の血管に動脈硬化がおこると、心筋梗塞などを引き起こします。
その他の合併症として、腎疾患や認知症などもあります。
高血圧と最も関連が深いのは、脳卒中です。
ご存知の方も多いかと思いますが、脳出血やくも膜下出血は突然起こってしまいます。
何の前ぶれもなく、急に意識を失ったり、激しい頭痛や嘔吐に襲われたりします。
意識障害が軽ければ、命の助かる確率は高くなるものの、体に麻痺などの重い障害が残ることも少なくありません。
前ぶれがないというのは、本当に怖いですよね。
個人的には、高血圧が認知症にも影響するということが興味深いと感じています。
認知症には、脳血管性認知症とアルツハイマー性認知症があり、18~65歳未満の認知症(若年性認知症)においては、脳血管性認知症の割合がアルツハイマー性認知症より多いことがわかっています。
脳血管性認知症は動脈硬化、脳卒中が原因で起こります。
つまり高血圧は、若年性認知症に大きく影響していることになるのです。
若年性認知症は近年増加傾向にあります。
また、アルツハイマー性認知症にも高血圧が影響していることがわかってきているようです。
認知症は本人だけでなく、周囲の人にも多大なる負担をかけることになるため、できるならばなりたくない病気ですよね。
高血圧が様々な恐ろしい病気に関連していることはお分かりいただけたと思います。
健康寿命を延ばすためにも、高血圧を軽視しないよう気をつけなければいけません。
そして予防の第一歩は、定期的な血圧測定だということも覚えておいていただけるとよいですね。
次回は、高血圧予防の食事についてお話ししたいと思います。
参考文献:
図解でわかる高血圧 新啓一郎監修 主婦の友社
臨床栄養学 武田英二・中坊幸弘編 講談社サイエンティフィク
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